研究室の考え方

私たちは、電磁波エネルギーというキーワードを中心において研究・開発を行っています。新しい機能を有するナノハイブリッド材料を用いて電磁波ならではの特異な物理化学的挙動を明らかにし、 さらには化学反応系、物質創成、材料合成への応用展開を目指しています。具体的には、マイクロ波領域(1mm-1m)の電磁波と、近紫外・可視・近赤外領域の電磁波(100nm-1000nm)について、下記のような研究を行っています。

マイクロ波を用いた化学反応プロセス革新

マイクロ波特殊加熱による化学反応促進

マイクロ波が物質中に侵入すると、電磁波エネルギーが熱エネルギーに転換することが知られており、これを応用した身近な例としては電子レンジが挙げられます。 このマイクロ波加熱には、電磁波ならではの迅速加熱、内部加熱、物質選択加熱のような従来の加熱には無い特長があらわれてきます。私たちはこれらの特長を利用し、 マイクロ波による固体触媒反応の反応促進を試みています。

成果1コア部分に炭素を選択的に充填したコア‐シェル型ゼオライトを合成しました。このゼオライトを触媒としたアルコール脱水反応では、 マイクロ波照射下において炭素が効率的に発熱し、特異的な温度発生による促進効果が起こることを示しました(図1)。

            

      図1、マイクロ波照射下におけるコア‐シェル型ゼオライト中の高温場形成
成果2マグネタイトを触媒として用いたエチルベンゼンの脱水素反応をマイクロ波照射下で行ったところ、固体触媒充填層の中心部の温度が最も高い状態が発生していました。 先の吸熱的な脱水素反応に対して、有利な逆転温度分布となっていることがわかり、これをシミュレーション解析により詳細に検討しました。



電子移動に対するマイクロ波促進効果

酸化還元反応は工業的に非常に重要な化学反応です。このような酸化還元反応の例として、酸化マンガン、酸化クロム等の固体酸化剤を用いたアルコール酸化による アルデヒド合成反応があり、この酸化還元反応がマイクロ波によって促進効果を受けることが明らかとなっています。わたしたちは、この酸化還元反応の重要な素反応過程である 電子移動反応過程がマイクロ波によって加速していることを証明しました。

成果3硫化カドミウムから電子受容体分子への光誘起電子移動速度を硫化カドミウムのフォトルミネッセンス測定により決定し、マイクロ波照射下で電子移動速度が促進されていることを証明しました(図2)。

 図2、(a)電子移動スキーム (b)通常加熱およびマイクロ波加熱中におけるフォトルミネッセンス測定
成果4Ni金属粒子から電子受容体分子への電子移動還元反応がマイクロ波照射下で加速される現象を見出しました。このとき、Ni粒子表面に吸着した 電子受容体分子への電子移動がマイクロ波の振動電場・磁場との相互作用によって加速されているという解析結果を得ました。

近紫外・可視光・近赤外領域の電磁波による光誘起電子移動プロセスの制御

交互積層構造による光誘起電荷分離

ナノ粒子あるいはナノシートを高次構造体として配列させたナノハイブリッド系を用いることにより、光触媒あるいは色素増感太陽電池、さらにペロブスカイト 太陽電池においてもっとも重要な素反応過程である電子移動を制御することができます。わたしたちは、種々の高次配列構造を創製する化学に関する以下の研究を進めてきました。

成果5酸化チタンナノシートと酸化タングステンナノシートをアルキル鎖を介して交互に積層したナノ構造体では、光照射下においてそれぞれの電子バンド構造に 応じた一方向の電子移動が起こり、この電子移動速度が層間距離に依存することを証明しました(図3)。

 図3、酸化チタンナノシート(青)と酸化タングステンナノシート(緑)の交互積層体での層間電子移動
成果6成果5の結果を複数種の金属酸化物半導体に展開し、電子移動速度がそれぞれの物質固有の有するバンド構造にも依存すること、具体的には電子移動に 関与するバンドのエネルギーギャップに依存することを示すことができました。



色素増感太陽電池・ペロブスカイト増感太陽電池におけるナノ構造研究

成果7色素増感太陽電池に用いる多孔質ナノ酸化チタン膜に(001)面を選択的に露出させた板状粒子を用いることで、電子注入過程が速くなることを見出しました(図4)。

 図4、(a)色素からチタン膜への電子注入スキーム (b)酸化チタン膜の(001)面の比率と電子注入速度
成果8(001)面を選択的に露出した板状酸化チタンを基板上に配列させる技術を開発し、配列構造を用いた色素増感太陽電池・ペロブスカイト増感太陽電池を提案しました。

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